あー誰だよコイツつれてきたの?
あー、
そういえば僕だ。
■
そうそう、思えば僕の誤りはそこにあったんだ。
あれは確か、ゆきみの非常食というなのお菓子がなくなったから、たまたま僕が買い物に行ったんだ。
「宵風、仕事だとよ」
そんな風に後ろから声をかけられて、僕はあの時振り返りながら思ったんだ。
お菓子より仕事の方が大事だったなんて知らなかった、って。
そんな胸中の呟きに気が付いたのか、ゆきみの機嫌が一気に悪くなって。
それで、何か忍術で任務に向かったんだ。
「ゆきみ、任務って何?」
「あー言ってなかったっけ?」
ゆきみが持っていたバッグをあさりながら言った。
何も聞いてない、とか思ってたら、目の前に書類がでてきて。
一番上のページには、 と書いてあって、左に写真が貼ってあった。
生徒手帳に貼ってあるような、そんなシンプルな写真だったけれど、なんと言うか彼女はとても綺麗で可愛らしくて。
書類にゆきみがつけたらしいラインがひいてある場所を読むと、そこにはこう書いてあった。
『――現在説得中の家の人質として、娘のを連れてくること。
傷をつけてはならないのが絶対条件である……』
「……ふーん……」
どうでもいいなぁとか思いながら僕は書類をゆきみに返した。
地図を見ていたゆきみは10秒ぐらいしてから気がついて(少しイライラした)、その書類をまたバッグに戻した。
「あ、ここだ、ここ」
そう言って、控えめな大きさのマンションを指でさした。
家っていうのは結構有名な家で、もっと豪邸に住んでいるのかと思ったがそうでもなかったようだ。
そうして少し作戦を練ろうとして脇に移動していると、制服姿の女子が一人、マンションから出てきた。
「ゆきみ、あれ……」
そう言うと、ゆきみはまた書類を出して、顔写真付きの一番上のページをまじまじと見つめた。
その写真と女子をみくらべて、こくり、と一回頷いた。
彼女だ。
「……んじゃ、いきますか」
そう言って、作業はすぐに終わったんだ。
ただ、正面と後ろに一人ずつ行って、声をかけて、元々首領からもらったらしい睡眠薬か何かを嗅がせて。
それでおわりの、はずだった。
■
「……宵風?」
そう僕の名前を呼びながら、横のソファに座った少女は、まさしく今僕が考えていた想い人で。
そのまま黙りこくっていると、彼女はこういった。
「あたし、そろそろ家にかえるかも、しれない」
そう、いった。
いや、なんで?
即ちそれは僕にとって永遠のサヨナラに近い訳で。
「……と言う訳、なん……っ?」
言いかけて、は服のすそを見た。
きがついたら、僕はの服を掴んでいて。
ちょっと自分でもびっくりしたけれど、本当に無意識だったんだ。
「宵風、もしかしてさ」
行ってほしくないんじゃないの。
そう言いかけた口は塞がれた、っていうか僕がふさいだ。
しばしの沈黙。
うつむく目線。
「……何で?」
「何が」
「何で行ってほしくないのか、きかせてよ」
あたりまえじゃないか、と僕は思った。
だって、それぐらい今の行為で解るだろ?
「……ぼくは、のこと、好きだから」
そのまま顔を直視できなくて、目線をそらした。
ふっふーん、とは笑う。
嬉しそうに、楽しそうに。
「……ゴメン、嘘だよ」
いかにも、企画どおりという表情をしては言った。
え、……企画どおり?
「本当はね、かえる気なかったんだ!
ただ、このままヘンな関係でいたくなかった、それだけだよ」
そう言って、は笑った。
嬉しそうに、楽しそうに。
なんだかはめられた感じがやるせなくて、企画どおりなんてうざったくって。
そのまま僕は、
「ちょっ……待て、話をってぎゃぁぁ!!」
断末魔が聞こえた。
人質≠ネんていうけれどさ。
とらえられたのは、どっちなのか。