あー誰だよコイツつれてきたの?

あー、

そういえば僕だ。

 そうそう、思えば僕の誤りはそこにあったんだ。

あれは確か、ゆきみの非常食というなのお菓子がなくなったから、たまたま僕が買い物に行ったんだ。

「宵風、仕事だとよ」

 そんな風に後ろから声をかけられて、僕はあの時振り返りながら思ったんだ。

お菓子より仕事の方が大事だったなんて知らなかった、って。

そんな胸中の呟きに気が付いたのか、ゆきみの機嫌が一気に悪くなって。

それで、何か忍術で任務に向かったんだ。

「ゆきみ、任務って何?」

「あー言ってなかったっけ?」

 ゆきみが持っていたバッグをあさりながら言った。
何も聞いてない、とか思ってたら、目の前に書類がでてきて。

一番上のページには、  と書いてあって、左に写真が貼ってあった。

生徒手帳に貼ってあるような、そんなシンプルな写真だったけれど、なんと言うか彼女はとても綺麗で可愛らしくて。

書類にゆきみがつけたらしいラインがひいてある場所を読むと、そこにはこう書いてあった。

『――現在説得中の家の人質として、娘のを連れてくること。
傷をつけてはならないのが絶対条件である……』

「……ふーん……」

 どうでもいいなぁとか思いながら僕は書類をゆきみに返した。

地図を見ていたゆきみは10秒ぐらいしてから気がついて(少しイライラした)、その書類をまたバッグに戻した。

「あ、ここだ、ここ」

 そう言って、控えめな大きさのマンションを指でさした。

家っていうのは結構有名な家で、もっと豪邸に住んでいるのかと思ったがそうでもなかったようだ。

そうして少し作戦を練ろうとして脇に移動していると、制服姿の女子が一人、マンションから出てきた。

「ゆきみ、あれ……」

 そう言うと、ゆきみはまた書類を出して、顔写真付きの一番上のページをまじまじと見つめた。

その写真と女子をみくらべて、こくり、と一回頷いた。

彼女だ。

「……んじゃ、いきますか」

 そう言って、作業はすぐに終わったんだ。

ただ、正面と後ろに一人ずつ行って、声をかけて、元々首領からもらったらしい睡眠薬か何かを嗅がせて。

それでおわりの、はずだった。

「……宵風?」

 そう僕の名前を呼びながら、横のソファに座った少女は、まさしく今僕が考えていた想い人で。

そのまま黙りこくっていると、彼女はこういった。

「あたし、そろそろ家にかえるかも、しれない」

 そう、いった。

いや、なんで?

即ちそれは僕にとって永遠のサヨナラに近い訳で。

「……と言う訳、なん……っ?」

 言いかけて、は服のすそを見た。

きがついたら、僕はの服を掴んでいて。

ちょっと自分でもびっくりしたけれど、本当に無意識だったんだ。

「宵風、もしかしてさ」

 行ってほしくないんじゃないの。

そう言いかけた口は塞がれた、っていうか僕がふさいだ。

しばしの沈黙。

うつむく目線。

「……何で?」

「何が」

「何で行ってほしくないのか、きかせてよ」

 あたりまえじゃないか、と僕は思った。

だって、それぐらい今の行為で解るだろ?

「……ぼくは、のこと、好きだから」

 そのまま顔を直視できなくて、目線をそらした。

ふっふーん、とは笑う。

嬉しそうに、楽しそうに。

「……ゴメン、嘘だよ」

 いかにも、企画どおりという表情をしては言った。

え、……企画どおり?

「本当はね、かえる気なかったんだ!
ただ、このままヘンな関係でいたくなかった、それだけだよ」

 そう言って、は笑った。

嬉しそうに、楽しそうに。

なんだかはめられた感じがやるせなくて、企画どおりなんてうざったくって。

そのまま僕は、

 

 

「ちょっ……待て、話をってぎゃぁぁ!!」

 断末魔が聞こえた。

 

 

 人質≠ネんていうけれどさ。

 とらえられたのは、どっちなのか。