「あーもう面倒くさい!!」
突然机に向かっていたが叫んだ。
宵風はビクッとしたようにを見る。
そんな宵風にはお構いなしという風に、は相変わらず叫んでいた。

「・・・・どうしたの?」
「どうしたも何もさぁ!面倒なのよ!これ!!」
そう言って宵風の目の前にズズイっと出したのは、年賀状。
そこには、綺麗な行書であけましておめでとうございます、と書かれている。
「・・・・これ?」
「そう、これ!」

綺麗な字で書かれた年賀状を、はぽいっと投げ捨てて、だー、とまた叫んだ。
「何で面倒くさいの?」
「もう、アンタはいいよね!あたし一応これでも社交的な女だから、友達多いの!
 ていうか知り合いに出さなきゃならないみたいなそういう雰囲気の知り合いが無駄に多いの!」
「へぇ、大変だね」
「他人事みたいに!」
「他人事なんだけど」
「うぅ・・・・」

宵風は、レモネードが入ったマグカップを口に当てる。
そしてズズっと飲んだ。
は、叫びつかれたのか、おとなしくなった。
「・・・・これ、飲む?」
「・・・ありがと」
宵風が飲んでいたマグカップをそのままに差し出すと、はすんなり受け取った。
そして勢い良く飲んだ。
「あ、そんなに勢いよく飲むと」
「・・・・・・ぶえほっぶえほっ!!」
「・・むせるよ、って言いたかったんだけど」
「遅いわ!・・ゲホッゲホッ」
は、宵風が驚くくらいむせた。
そしてずっと咳き込んでいる。

「・・・・・・」
それをずっと見ていた宵風だったが、思い立ったように立ち上がっての横に座った。
「ゲッホゲッホ」
「・・・大丈夫?」
「無理。・・・ゲホゲホッ」
「ごめん」
そう言いながら宵風はの背中をさすり始めた。
は咳き込みながらも、気にするなという風に頷いた。
宵風の顔色は、少し安心したように変わり、背中をさすっていた。


「・・・・ゲホッ」
少しの咳も軽くなってきた。
宵風も少しずつ背中をさする手を緩め始めた。

「ゲッホゲッホ!」
「・・・、その咳わざとやってるでしょ」
「あれ、バレた?」
「わかりやすすぎ」
えへへ、とがはにかむ。ついでに、だって宵風の手、あったかいんだもん、と一言言った。
「・・・・手、握ってあげてもいいけど」
「やった!」
宵風がの手を握ると、はいひひと笑って宵風の胸に頭を預けた。


の方が、あったかいけど」
「宵風もあったかいよ」
放り投げられた年賀状は、ゴミ箱の横で静かに佇んでいた。






適度に君を愛してる