ここに、長くてまっすぐな道がある。
その先は、真っ暗で何も見えなくて、もしかすると落とし穴があるかもしれない。
ただ、見えるのは、自分の立つこの場所と、うっすらと見える上。
後ろには、きっと何があるかもわからない。
自分の今まで通ってきた、辛い、長い道。
――そんな時、君はどうするんだ?
「へ?」
もふもふとコンビニで買ってきたカレーパンを食べながらは答えた。
「何・・・・宵風ってばあたしを置いて恋煩いってか?」
「そういうんじゃないけど」
「けど?」
「なんとなく・・・聞いてみたかった」
「ふーん」
考えるようにまたもふもふとカレーパンを食べ始める。
相変わらずは食べるのが遅い。見ていてこっちが食べたくなる。
「別にどうもしないんじゃない?」
「え?」
しばらくしてから、は答えた。
結構時間たつのに・・・答えはどうもしない?
やっぱりはよくわからない奴だ。
「だって、別にどっちにしろ行かなきゃなんないんでしょ?だったら迷う必要なんて無いじゃん」
「まぁ・・・そうだけど」
そうだけれど、怖くないの?もしかして、人生のどん底に落ちるかもしれない。
果ては、生きるよりも辛い事があるかもしれない。
「まぁ・・そん時はそん時っしょ。そういうのビビってたら生活できないじゃん。
・・・ていうか、宵風がそういう事言うの珍しいね」
「何で?」
「だって、いつも宵風、自分が常にどん底人間だっていうオーラ出してるし」
別に好きで出している訳ではないけれど。
「目がもう既に死んでるし」
悪かったね。
「だけど」
「何?」
「そんな宵風をあたしは好きになったんだよなぁ・・・」
「うん」
「うんってそんなサラリと・・・」
「僕もの事好きだよ」
「うっ・・またまたそうやってクサイセイフを言ってあたしをほのめかすつもりか・・・!」
違う。本心だ。
そう言うとはどんどん顔が赤くなっていく。
可愛いけれど、何で赤くなるのかよくわからない。
「う・・・話戻すからね!」
「うん」
照れ隠しのようにまたカレーパンにかじりつく。
意図はバレバレな所が、少し面白い。
「だから、宵風は少しポジティブにならなきゃ駄目だ!」
「・・・・何ソレ」
「・・・・・・・・」
ビシッと人差し指を天に指して言ったは、そのまま止まった。
横に居る僕を、呆れたように見る。
「うーんと、ポジティブっていうのは・・・そう・・・ね、うん・・・」
「何?」
言葉を濁す。そこで何で詰まるんだろう。
それでもずっとは詰まり続ける。
「あれ、何ていうか・・・明るく行こうぜー?、みたいな・・・?ははは・・・」
「・・・もしかして意味知らないで雰囲気で言ってたでしょ」
「うっ!」
は、カレーパンをぎゅっと握り締めてこちらを見た。
目がこれ以上聞くなって言っている。
でも何か面白いので、気づかないフリしてをいじめることにした。
「もしかして言葉がカッコイイから、言ってみただけでしょ」
「ううっ!」
「僕が聞いてこないと思って油断してたでしょ」
「うううっ!」
僕に問われる度に、カレーパンをぎゅっと握り締める。
おかげでカレーパンはあられもない姿に変わり果てていた。
というより、カレーが横から漏れている。
「な、何でこういう時だけ鋭いの!?宵風くんは!」
「・・・気のせいだよ」
「嘘だ!」
都合のいい脳みそを持ちやがって!
わーわーとわめくを、僕は黙って見つめた。
はいつも常に表情が変わっているので見ていて飽きない。
あんなに変えて顔が疲れないのだろうか。
「・・・ふぅ」
どうやらはわめき疲れたらしい。
静かになった。
「お疲れ様」
「どうも有難う」
変わり果てた姿になったカレーパンにかじりついて、ははっとなる。
「話がまた逸れた」
「うん」
「もう、さっきからずっと逸れてばっかりだよね」
「僕の所為じゃない」
「・・・・全部あたしの所為ですか」
「うん」
はじとーっと僕を見て、カレーパンを食べる。
そして一言、話を戻そう、と言った。
「うん」
そこで僕達は黙った。
どうしたんだろう、とを見るとはこちらを見た。
「で、何話してたっけ?」
「・・・・・もういいよ」
「あ、いいの?」
何かうじうじ考えている僕が、バカらしく思えてきたから。
ポジティブシンキング