携帯越しのノイズが嫌に耳にこびりついた。
所詮作り物の声だとわかっていても。
― ―
最初から言ってくれればよかったんだ。
何で言ってくれなかったのかは知らないけれど。
「壬晴? お友達と遊びに行くって言ってたわ」
そう、壬晴の祖母から聞いた。
多分本当の話だと思う。
今日遊ぶって約束、忘れたのかな。
面倒くさいのもあって、は家に帰った。
「……、遅いぞ」
そう言って、他の忍と共にいたのは、祖父の櫟だった。
「皆さんお揃いで、何か?」
そこの周りにいたのは灰狼衆の忍だった。
どくり、と音をたてて心臓が鳴った、気がした。
「いや、風魔の里に奇襲をかけたらしくてな。その話を――」
奇襲?
まてよ、確か壬晴の祖母の話だと――
どくり。
確実に音をたてる。
嫌な、予感がした。
「お前も灰狼衆につくだろう?」
なんだよ、それか。
「何とか言え、」
緊迫した空気。
何も答えられない。
ピリリ、と、電子音が聞こえた。
携帯電話だ。
ウエストポーチの中に入れたはずのそれを探す。
ピッ、
『もしもし、?』
「……雷鳴?」
『ちょっと、今大変なの!
風魔の里に灰狼衆が入ってきて……
帷先生、がっ……!』
「……―――……」
どうしようか。
周りの忍は、会話の内容が聞こえているらしい。
『もしもし、っ?』
「風魔の里ね?
……今行く」
そう言うと、櫟の顔色が変わった。
「……捕らえろ」
ふっ、と笑う。
ウエストポーチからコインを取り出す。
それを自分の周りに三角形にして出す。
その作業が終わると、灰狼衆の忍はとびかかってくる。
パチン、との指が鳴る。
刹那、
そのコインの範囲内が光り、強力な風が舞った。
「風舞」
そこに立っていた結界師が呟くように言霊を口からはいたのと同時に、そこにあった人影は、消えた。
― ―
携帯越しのノイズが嫌に耳にこびりついた。
所詮作り物の声だとわかっていても。
だから、後悔しない内に行こうじゃないか。
周りがどうなろうとも。