今日から、私は。
青い空、白い雲
「っうわぁぁっ?!」
そんな、自分から考えてもヘンな声をあげて、私は走っていた。
好きで走ってるわけじゃないさ。
こんな坂、何で走らなきゃいけないんだよ、自分の意志で。
あはは、と後ろで笑う声が聞こえる。
「ざまぁみろ、」
私をいじめているグループのひとりだろう。憎々しげな視線が痛い。
「っうえっ?!」
地面にある大きな石につまずいたのと――下にはもう地面が無かったのと。
「わあァァッ!」
落ちる、落ちる、落ちる……っ!
ただ、おかしかったのはその時で。
「あれ?」
落ちてない。
ぱたん、と地面に着地した。
とりあえず、足を傷つけなくてすんだ。
「よかった……」
「それ、何の術?」
「うわおっ!!」
いきなり声をかけてきたのは……同じクラスの六条君だった。
「あ、えっと、術……?」
「なんだ、違うの」
そう言うと、彼は去ろうとした。
「いたいた、森羅万象!」
なんだこの忍者ルックのおっさんは。
「……また来たの」
「知り合い?」
「ちがう」
必死に否定している六条君は初めてみた……。
「逃げるよ」
「了解」
「逃げられる?」
「私、陸上部だし」
「そっか」
三、二、と彼は手だけでカウントした。
―― 一、
だっ、と地面を蹴る音を立てて、私たちは反対の方向へ飛び出した。
「待て、小娘っ!」
「どわっ」
首根っこをつかまれて、そのまま地面に投げ出された。
「何すんのコスプレおじさん2号」
「うるせぇ!!」
必死だな、うん。
「少し痛い目見てもらうぞ?
森羅万象を逃がしてしまったらしいからな」
そう言うと、手を合わせてよくわからない動作をした。
そして、
――『腐土柱』!
地面の土が一気に盛り上がり、私はバランスを崩してしりもちをついた。
その土はそのまま上昇し、私に覆いかぶ――らなかった。
直前でその土は動きを止め、相手は驚いた表情で見ている。
「………え、っ」
そして、その土はそのまま相手の忍者へと覆い被さり、
「…わあああああぁぁあぁぁっ!!」
その忍者を、消した。
― ―
今日から、私は。
普通の学生じゃなくなりました。