「・・・それでなんで僕の家来たの」
「いやーあたしホテル泊まってたのすっかり忘れてたよ」
「忘れちゃだめでしょそんな大事なこと」
「す、すまんです・・・」
泣きそうになって勢いで清水さんに引っ張ってきてもらって、着いたのは、お好み焼き屋さんだった。(なんで・・・)泣くのをこらえながらそのよくわかんない状況を飲み込もうとしたのだけども、なんかとりあえずダメだった。

「うん・・・それで、さん?だよね?」
「あ、はい!」
相澤くんという男の子が、控えめに私に話しかけてきた。しかも相澤といえば、主人公の六条?くんのパートナー的な子だったよね・・・確か。なんていうか、此処は地獄だけど、隠の王のパロディ地獄なのか?と私はちょっと先ほどから真剣に考えるようになった。なんというか、嬉しいようなおいしいような悲しいような微妙なパロディの入った地獄だ。私は地獄というのはもっとこてこてのぐろぐろだとばかり(例えば死神さん、もとい宵風さんが一番最初に連れて行こうとした扉を勘違いしたとき)思っていたけれど、閻魔大王様もいないし死神さんもかなりスタイリッシュだし、みんな普通に生活してるしで、どうやら発展したのは現世の世界だけじゃなかったようだ。そうすると天国も同じくらいすごいのか?いやいや天国、ていうくらいだから、なんか地獄なんかとは比べ物にならないんだろうなあ。私も行ってみたかったけれど、でも隠の王のパロディ地獄なんて見たことも無かったから、やっぱり地獄でいいと思った。

「えーとさん、家が、無いんだっけ?」
「え・・・あ、はいそうなんです」
「うーん困ったなあ。どうすればいいと思う?六条」
「・・・別になんでもよくない」
「よくないだろ!女の子が路頭で迷ってたら絶対食われるし!」
「食われるって・・・まあ、それは間違ってないと思うけどね。それで、僕は六条の家に泊まらせた方がいいと思うんだけど」
「さんせーい!」
「ちょっと、何勝手に賛成してんのそこ。あくまで指定権は僕で決定権はうちのおばさんなんだけど」
「かってー事言うなよ壬晴ー!何権何権って、おまえそんなに志村けん好きなのかよー!」
「・・・・もういい(話になんねえ)」

疲れたように六条くんがため息をついて今度はわたしを見た。それから「んで、アンタはどうしたいの」と抑揚のない声で聞いてきて、とっさにわたしは「泊まる!」と言ってしまった。(ちょちょちょちょっと!待ちたまえよわたしの口!!)
即答してしまった所為か、六条くんは更に呆れた目でわたしを見てきて、何かいろいろと恥ずかしくなってきたわたしはうおおお!と叫びだしたい気分になった。なんてったって男の子の家に泊まるかって聞かれて即答するんですぜ?(うわあ何かぜったい下心あるとかおもわれてるよ・・・!ぜったいだよ・・・!)

焦りと恥ずかしさが頂点に達しかけた時、六条くんは呆れた目をわたしに向けたまま、「うん、じゃあおばさんに聞いてくるからそこで待ってて」と言って立ち上がり、わたしがびっくりして何か言うまえにすたすたと部屋をでていってしまった。(え、これって、ちょっと、)

「おー!やったじゃん、泊まらせてくれるってー!イェーイ!」
「いや・・・まだ六条はいいって言ってないけど・・・」
「ほらほらも何ぼけっとしてるんだよ!ほら手ぇ出して!ハイターッチ!!」
「・・・清水・・・・」
遠い目をし始めた相澤くんと、何故かじぶんのことではないのにノリノリになっている清水さんの雰囲気のギャップにわたしは更にこんらんしてしまったみたいで、ぼんやりと窓の外をみていた。