それからしばらく泣きまくって気分がすっきりした私は腫れぼったい目を冷やすことにした。たくさん泣いた所為でぐずぐずになってしまった鼻を啜りながらポケットに入っていたハンカチを濡らすために水道に向かった。目は腫れすぎてなんだかとても眠い感じがした。
ぐずぐず鼻を鳴らしながらハンカチをぬらしていると突然横から黄色いものがひょっこり現れた。「うおおお!」と私は大声をあげながらびっくりして手に持っていたハンカチを思い切り投げつけてしまった。(・・・!)すると相手もびっくりして私が投げつけたハンカチを「むおお!」と言いながらもがいてとろうとした。(うわ、ちょ、うける)
それから黄色い人(黄色いのは髪の毛だけど)はハンカチを必死でとると、ぜーはーぜーはーと大きく息を吸ったりはいたりした。その人はやってることはとても面白いけど、よく見ればとても美人な金髪のおんなのこで、私はびっくりしながらぱちぱちと瞬きした。おんなのこがこちらを見ると、私ははっと我に返って慌ててそのこに謝った。
「うわ、あの、すいませんなんかうちのハンカチくんがすごい迷惑かけて・・・!」
「ううん、大丈夫。ちょっとびっくりしただけだよ、ほんとにちょっと」
あははーとおんなのこは笑った。私はそれを見てどきどきしてしまって、美人さんは何をやっても美人でとてもすごいなあと感動した。
「ところで、なんでさっきハンカチぬらしてたの?服すごいびしょびしょなのに」
「えーと、目を冷やそうかなと思いまして・・・」
「え?目?ってうわ!すごい腫れてる!!大丈夫!?」
「あ、はいそこら辺はだいじょうぶですからどうぞお気になさらず!」
私はハンカチを握ってそう言うと、おんなのこは一瞬面食らったようなかおして、それからぷっと吹き出した。私がなんでだ!という顔をするとそれを見て今度はあはははと笑い出した。「な、なんですか!」私がちょっと警戒しながら言うと、美人さんはうひゃひゃひゃ笑いながら「ごめんごめん」と謝った。けど、なんだかとても謝られた感じがしなかった。
「いやー君おもしろいね!名前は?」
「うえっ!?あ、はい! ともうします!」
「あはははそんな畏まらなくていいし!うけるー!!」
「えええなんだかすいません!」
私が謝るとおんなのこは更にわらった。とてもよくわらう人だ、・・・。私はどう反応すればいいかわかんなくてそのまま固まってしまったけど、おんなのこに「あ、あたし清水 雷鳴!」と自己紹介されたときにしっかり元に戻った。(ていうか雷鳴て!)(また隠の王の名前を持つ方に出会った!)(そうぐうりつ高いな!)
清水さんはぽりぽりと頭をかいて「あー」と気まずそうに言ってから、「とりあえずその濡れた服どうにかしよ。家どこ?」と聞いた。私はその質問に途端にさっきまでの出来事を思い出してとてもかなしい気持ちになってしまった。(やばい、なきそうだ、)泣かないように必死にこらえる私を見て清水さんは慌てて「あ、うわ!う、うちくる??」と聞いてきた。私は目の淵までやってきた水をなんとか零さないようにしながら「うん」とできるだけ声が震えないようにして言った。すると清水さんは私の濡れた手を握って「んじゃ、行こう!」と公園の出口に向かって私を引っ張っていった。
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