「うきゃ〜〜〜カワイイ〜〜」
「にゃーん」
ハートマークを必要以上に飛ばして僕が拾ってきた子猫を抱きしめる
・・・・ちょっと、拾ってきたのは僕なんですけど。

「宵風ってばサイコー。こんなにカワユイ子猫ちゃんを拾ってきてくれるとは・・・げへへ」
そういうの顔はもう既にだらんと緩んでいて、うっとりと子猫を見つめていた。(そんなところもカワイイから何か許せない)

いや、別にに最高だって言われるほどそんな大層な事はしていない気がするんだよね。
ただそこら辺に居た子猫をが喜んでくれるかなーと思ってかっぱらってきた。(全てはのため!)
僕があげたものを喜んでくれるのは凄く嬉しい事なんだけど、さっきからちょっかい出してんのに少しも構ってくれないとか、それは大問題だと思わない?

子猫は子猫での胸にすりついてにゃーにゃー言ってるし。生意気ったらありゃしない。を独占している子猫は、僕をバカにしたような目で見るのは多分気のせいではないと思う。
あーもう、が可愛がってなかったらすぐ殺してやったのに。

子猫に対する嫉妬で、僕は子猫に殺気を送りながら子猫とじゃれるを見ていた。



僕がこうやってじっと見ていても、は反応しない。
いつもなら、「恥かしいから見ないでよ!」とか何とか言って何が何でも見させないのに。
そこまでしてその子猫とじゃれたいの。
どす黒いどろどろとした何かが僕の中を渦巻く。
あー本当にイライラする。子猫を何とかして痛い思いをさせてやりたい。
ていうか、そもそもこの子猫を拾ってくるんじゃなかった。

だったら動物じゃなくてぬいぐるみにするとか・・・そうだよ、ぬいぐるみにすればよかったんだよ。
こんなどこにでもいそうな子猫なんざ絶対ぬいぐるみとして売られてるに決まってる。
僕だって伊達に仕事やってないから、財布はなかなか入ってるから、ぬいぐるみの一個や二個、どうって事ない。
あーもう本当後悔した。こんなに後悔したのはいつ以来だろう。

そんな事考えてても、はまだ子猫に夢中。
本当、僕なんて視界から、最早脳の中から消え去ってるらしく、まるでこっちに気づこうとしない。子猫も、僕をバカにしたようにチラリとたまに視線をよこすし。
何もかもがうまくいかない。ていうか、子猫、いい加減の胸の中から離れてよ。
はこっちに気づこうとしないし、寂しい僕が今を押し倒したりしても大丈夫かな。いや、それはやめよう。後が怖い。


どうやってと子猫の間を邪魔しようかとうんうん唸ってもいい案は思い浮かばず、結局僕は何もできなかった。そんな自分が何故だか無力に感じて物凄くむなしくて。
そもそも、は僕の事好きなのか?という疑問にすら行き着いてしまう。一番考えたくない、答えを出すのが怖い、それでも知りたい疑問。
そういえば、僕達って付き合ってるんだっけ?いや、僕が最初に好きだって言って、がOKを出してくれたから、相思相愛なワケだよね。あ、でも最近聞くところによると、好きでもないけど、遊び感覚でOKを出す人が居るんだとか居ないんだとか・・・。
え、もしかしてはそういう中のひとりなの?
100%違う、とは言えない。けれど、100%そうだ、とも言えない。
人間の心の中は本当にわからない。確かどこかの里で人の心の中を読むとか何とかの禁術を使える忍がいたような気がする。
今、僕はその禁術を心の底から習得したいと思った。

「あ・・・・宵風?」
「・・・・何?」
が気まずそうにこっちを見ている。あーやっと気づきました。
「いや・・・その、怒ってる?」
「・・・・別に」
(うわーん怒ってるよ宵風ー!!)
はオロオロとして子猫をおろしてこちらへ寄ってきた。子猫がから離れたことにより、僕の機嫌は少し上がる。
は僕の隣に座って、僕の顔を覗き込んだ。
「え、とさ・・・うーん・・・うまく言えないんだけど・・・」
「何?」
僕が聞くと、は黙り込んでしまった。そして少しずつ顔が赤くなっていく。僕がじっと見つめているとは恥かしそうに口を開いた。
「いや・・・その・・・宵風最近よく出かけるから寂しくて・・・子猫、何か宵風に似てるからその・・うん、宵風を子猫と置き換えて遊んでたー・・・みたいな?あはは」
そう言うの顔はもう面白いくらい真っ赤で、本当林檎にでもなれるんじゃないかってくらいだった。
僕は、嬉しいような恥かしいような申し訳ないようなで、とりあえず目を見開いた。
は恥かしそうに俯いちゃって(それがまた何とも可愛くて)僕はその真っ赤な頬を両手ではさんで上を向かせた。
「あ、あわわ・・なな何するの宵風・・・」
目線をそらすに構わず、僕は口を開いた。
「僕、言いたい事が3つあるんだ。言ってもいい?」
「どど、どうぞ!5つで9つでもいくつでも!」
「ひとつ。僕は怒ってないって事。ふたつ。寂しいから遊びたいっていうのは嬉しいけれど、これからは必ず僕自身と一緒に遊ぶ事。みっつ。この猫と一緒にしないでほしいって事」
「は、はい!了解しました!!」
真っ赤な顔で元気よく返事するを見て、僕は満足した。(よかった、いつもどおりに戻った。)
僕の機嫌もすっかり直っていて、さっきのもやもやは何処かへ行ってしまった。満足して、の頬を挟んでいた手を離す。の頬は、かなり熱かった。

「じゃ、宵風!言いたい事はきちっと聞きましたから、わたくしめは戻りたいと思います!」
「うん。下がっていいよ。・・・って、え?」
思わずノリに乗って返事をしたけど、オイオイそれじゃぁ話が違うでしょ。慌ててを見るけど、既に子猫を抱き上げている状態だった。
僕が芸能人だったら多分勢いよくスベっているだろう。なんでやねんというツッコミと共に。ちょっぴり不満だったけど、さっきみたくもやもやは現れなかった。
しょうがない、と肩をすくめて、もう一度と子猫を見る事にした。




「にゃっ!」
僕を見てバカにしたように鳴いた子猫を見た時、僕は本気でコイツに気羅を打ち込んでやろうと思った。















She is mine!
(彼女は僕のものです!)