時々、あたしは雷光さんのことがただの腹黒に見えて仕方ないときがある。
(いやいやこれは本人の前では決していえないことだけど)
だってあれでしょ雷光さんって見た目はちょっとセンスのない美青年、なんだけど
いざ話してみるとなんというか「あぁこんな人か・・・」ってなるんだよね。
(いやいやこれは本人の前では決していえないことだけど)
見た感じピンクの髪した雷光さんはいい感じに素敵だと思う。
微妙なセンスですらミスマッチしてるし(他の人には適用できないミスマッチだよね)
あの腹黒魔王ぶりですらなんとなく「うんまあ納得できるかもね」ってなるんだよね。
そこらへんが雷光さんって凄いなーとは思うけど
彼はそんな絶妙なミスマッチの所為かちょっと腹黒で
(どういう経緯を辿ったらあんな腹黒ができあがるのかわかんないけど)
結構ナルシーが入っていたりもする。
(いやいやこれは本人の前では決していえないことだけど)
今日も楽しくあたしは仕事に出かける。
表の仕事は女子大生として通っているので、とりあえず大学に行く。
背負っているリュックを背負いなおしながら雷光さんのことを考える。
あたし達は去年めでたく付き合うことになった。
勇気を振り絞ったあたしがダメモトで告白したら意外にも返事はOK。
その時はほんとに心臓が飛び出るぐらい驚いたけど
(実際ちょっと何かがでそうだった)
一年もたってそこそこ仲良くやっている。
ただあたしは分刀には入っていない上に学校でも会えないので
滅多に雷光さんには会えない。
しかも最近雷光さんは私事があるらしくてただでさえ少ないデートの時間が
更に減っていっている。(これは全く遺憾である)
むかつくから最近近くにいる宵風に手当たり次第八つ当たりして
(その度に宵風に気羅を打ち込まれそうになって)
それでも機嫌は直らないから俄雨のとこいって八つ当たりして
(その度に首領に仕事増やされて)
結局あたしは毎日を煮え切らない思いで過ごしているのだ。
本当にどうにかしてよ雷光さん!
こんなこと言うのは何だか悔しいけど、雷光さんはすごくモテる。
だからこそ雷光さんが任務中に他の女とイチャついていないかとか
(任務中にイチャつくとかどんだけ不謹慎なんだ!)
変なしつこい女にストーカーされていないかとか
(べ、別にあたしのことじゃないからね!)
彼女は彼女なりに心配事が多い。
それでもこの彼女っていう場所を譲れないのはやっぱり愛・・・だよね!
「・・・あ!」
「やあ」
噂をすればなんとやら。
ピンク頭のさらさらヘアーがこっちにくると思ったら雷光さんだった。
ずっとさっきまで雷光さんのことで一喜一憂してたくせに
本人が現れたらさっきまでの文句とかが全部吹っ飛んでいく。
「最近会えなくて悪いね。仕事詰めだよ」
「うぅん、気にしなくていいよ、しょうがないし!」
こらこらこらー!何言ってるんだあたし!
さっきまで仕事なんて滅んでしまえとか思ってたじゃん!
何で?何でなの?これぞまさに雷光マジック?
「それでね、やっぱり会えなかった分はちゃんと埋めなくちゃね?」
「え、えぇと・・・?」
それってまさかのまさかですか!?これからデートなのですか!?
あたしが期待を込めた目で見ると、雷光さんは苦笑しながら
「うん、そうそう」
と調子をあわせてきた。(さすが!)
あーもうほんとに今日は宵風にも俄雨にも八つ当たりしなくてよかった!
多分あたしは今までに一番の幸せだとおもっている。
いまだに嬉しそうにしているあたしに雷光さんはそっと歩み寄ってきた。
ふわ、と雷光さんの香水のにおいがしたかと思うと、頬に硬い感触。
それが雷光さんの胸板だって気づくのにはしばらくかかった。
「なっ・・・なななな・・・!」
「ふふ、何回やっても初々しいね。可愛いな」
「か、かか、かっ・・・かわっ・・」
「面白いね全く。どうやったらそんなからかわれやすい人になれるんだい?」
「は、はうわ・・・あわわ・・」
驚きと恥かしさでまともに言葉を喋ってないあたしにも雷光さんは面白そうに笑って
またぎゅっとあたしを抱きしめた。
勿論そのせいであたしは心臓どころか体の中にある全てのものを吐き出しそうだ。
(食事中の人はごめんなさい!)
「あ、あああの雷光さん・・・!」
「ん?」
「い、いつになったら離してもらえるんでしょーか・・・?」
「うーん、しばらくはだめ」
「えー!」
これ以上抱きしめられてたら恥かしくて死んじゃうよ!
だから離してよ雷光さん!
「やだ」
あたしはまだ何も言っていないのに雷光さんは面白そうに言った。
アフターワールドでもう一度